民営化路線を抜本的に見直す郵政改革法案が衆院で強行採決されたが、最大の焦点である郵便貯金と簡易保険の限度額引き上げについて、ほとんど審議されないまま素通りとなった。政府は来年10月の法律施行時に引き上げ幅を見直すとしているが、国会審議と同様に十分な議論を行わないまま、強行突破で“肥大化路線”を突っ走る構えだ。
「政府のかかわり方が金融システムに影響を及ぼすことを念頭に、制度運営しなければならない」
日銀の白川方明(まさあき)総裁は31日に都内で開かれた講演で、郵政改革法案についての質問にこう答え、限度額引き上げが地域金融機関の経営を圧迫することへの強い懸念をにじませた。
政府は政令によって郵便貯金の預け入れ限度額を1千万円から2千万円に、簡易保険の保険金上限額を1300万円から2500万円に引き上げる方針だ。だが、法案には明記されていないため、わずか6時間で強行採決された衆院総務委員会では、政府からの具体的な説明はなかった。
自民党議員が民間から郵貯への資金シフトについてただしたが、亀井静香郵政改革・金融相は「急に動くと短絡的にとらえることはない」と根拠も示さず、かわした。
限度額引き上げは、全国一律のユニバーサルサービスを提供するコストを賄うことを大義名分にしている。実際のコストについては、「過疎地の郵便局の金融事業で年464億円の赤字が出る」と委員会で説明されたが、これは大塚耕平郵政改革担当副大臣が旧郵政公社時代のデータをもとに個人的に試算したものに過ぎない。
亀井氏が打ち出した最大6万5千人の非正規社員を正社員化するには、年2千億円以上の人件費がかかるとされるが、その費用をどう捻出するかも、まったく示されていない。
郵政改革の最大の問題点は、政府が持ち株会社である日本郵政に3分の1超を出資する「暗黙の政府保証」を維持したまま限度額を引き上げ、民間から資金を吸い上げることにある。
「民業圧迫」に加え、かき集めた資金をどう運用し、損失が発生した場合に誰が責任をとるのかという議論が行われた形跡はない。かつての財政投融資が復活し、官主導で非効率な分野にお金が流れ込むとの懸念もまったく解消されていないのが実情だ。
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